息がつまるほど怖い。ホラーなディズニー風映画『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』

1 週間前

音を立てたら即死という、よくあるホラー映画とは逆のアプローチをとった『クワイエット・プレイス』から3年。オリジナル製作当初は続編の予定は無しとされていたものの、トリロジー(三部作)の2作目として『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』としてカムバックしました。

筆者は試写会で鑑賞しましたが、1作目を上回る緊張感とストーリーの広がり、極限な状況の中でも繁栄を望んだ母親が直面する数々の苦労と家族の成長が語られた素晴らしい作品になっていました。

そんな本作観賞後の感想をシンプルに表すなら、「ホラー版ディズニー風映画」でした。というわけで、なぜそう思ったのかを極力ネタバレ無しでお伝えしていきますよ。

(続編ですので前作『クワイエット・プレイス』のネタバレはご容赦を!)

Video: パラマウント・ピクチャーズ / YouTube

テーマは「成長」

『クワイエット・プレイス破られた沈黙』0『クワイエット・プレイス破られた沈黙』(C)2021 Paramount Pictures. All rights reserved.

『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』がディズニーっぽいと感じたのは、テーマが成長だからです。

ディズニー映画は、主人公を成長させるために、物語の初っ端で親を死なせます。それは、親の死が、子どもを成長させるもっとも手っ取り早い方法だらです。

本作の場合、前作『クワイエット・プレイス』の最後で、アボット家は、大黒柱でもっとも頼りになる父親リーを失いました。

リーは家族を守る責任感があり、いざというときのために準備をし、その日生き延びることができた喜びを、子どもたちの寝顔をみながら噛み締める、現実的で準備を怠らないタイプでした。

一方、妻であるエヴリンは、子どもたちを守る立場でありながら、繁栄を望みました。3人も子育てしているだけでなく、末っ子を音が原因で失っているのだから、新たに命を迎えることが、家族を危険に晒してしまうことはわかっていたはず。しかし、彼女は種族維持本能に従い、新たな命を授かりました。そして、リーは家族のために身を犠牲にしました。

『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』は、前作のラストから5秒後から物語が開始するのです。

観客も「何か」も成長する

『クワイエット・プレイス破られた沈黙』000『クワイエット・プレイス破られた沈黙』(C)2021 Paramount Pictures. All rights reserved.

新生児の面倒をひとりで背負うつもりがなかった(であろう)母親と、賢いけれど難聴で「何か」の忍び寄りに気づくことができない娘、自立心は強いけれど幼さが残る反抗期の息子、そして生まれたばかりの赤ん坊…。そんな4人が、父親の死を悲しむ暇もなく、住処を捨て、音消し目的の砂の道を超えた外の世界に出ていくのだから、当然ながら旅を成功させるためには成長せざるをえません。

しかし、成長するのはアボット家だけではありません。前作では「音に反応する」ということ以外明かされていなかった「何か」にも成長がみられるようになるのです。

そして、物語が進むにつれ、観客も意識の変化、つまり成長を求められるのです。

前作で、妊娠/出産を強行したエヴリンに否定的な感想を持った人は、音を立てずにひっそりと暮らしてやり過ごすことは一時的な解決にしかならず、エヴリンの楽観的に見えた行動こそが、新世界で生きていく覚悟のあらわれだったと思い知らされるはずなのです。

緊張感と恐怖を高める明るさとカメラワーク

『クワイエット・プレイス破られた沈黙』00『クワイエット・プレイス破られた沈黙』(C)2021 Paramount Pictures. All rights reserved.

ここまで書くと、成長メインのロードムービーだと思われてしまいそうですが、ホラーとしての怖さも健在。むしろ、前作よりもパワーアップしていました。

怖さの鍵を握ったのは、いつなんどき「何か」が襲ってくるかわからない恐怖と過酷さを伝えた、昼間の明るさ。『クワイエット・プレイス』シリーズの「何か」は、音に敏感に反応して攻撃してくる習性があるため、登場人物も、見守る観客も、音を立てるかどうかに全神経を集中させます。

暗闇からいつ何時モンスターが飛び出してくるかドキドキするよりも、「何か」の存在がすでに見えていて、それを音をたてずにやり過ごせるかを見守る方が緊張が高まります。これは、呼吸音すら潜めてしまうと評された前作を上回る怖さでした。

『クワイエット・プレイス破られた沈黙』0000『クワイエット・プレイス破られた沈黙』(C)2021 Paramount Pictures. All rights reserved.

また、常に動いているアボット家を捉えたカメラにも秘密がありました。観客の緊迫感が途切れてしまわないように、カットを一切入れずに流れるように滑らかな長いシーンをつなげることで、次にどこに向かうのか予測がつかないようにしたそう。また、役者に合わせてカメラを動かし、何も隠すことなく動きを逐一追うことで過酷さを伝えているそう。

緊迫感や緊張感を保つという点では、これらのカメラワークは抜群に効果を発揮しています。上映時間は1時間37分ですが、劇場をあとにする時はグッタリ。劇場の他の観客とは、ことのあらましを最後まで見守り抜いた達成感と一体感を共有できた気がしたほどです。

『クワイエット・プレイス破られた沈黙』2『クワイエット・プレイス破られた沈黙』(C)2021 Paramount Pictures. All rights reserved.

本作はトリロジーの2作目だそうですが、シリーズとしては次作で終わるのがもったいないほどのポテンシャルを持っていると思います。他のホラー映画と異なり、サバイバルよりも家族と成長に重きを置いているので、極限の状況でのアボット家の成長をみたくなる人は多いはず。

特に、生まれたばかりの赤ん坊の今後には注目したいことでしょう。酸素吸入機の影響はあるのか、会話のない家族の下に生まれた赤ん坊は言葉を発達させることができるのか、など、少し考えただけでも疑問が次から次へと出てきます。

キャラクター主導の作品なので、むしろ3作目で終わったらもったいないとすら感じさせます。ホラー映画でこんなに続編を望むなんて、『ジーパーズ・クリーパーズ』以来でしょうか(あいつは一体なんだ)。

最高に緊張できるホラー映画を楽しみたいなら、ぜひ劇場で。呼吸すら遠慮したくなるなんて、コロナ禍の映画として最高だと思いますよ。

クワイエット・プレイス 破られた沈黙』は6 月 18日(金)全国公開。

(C)2021 Paramount Pictures. All rights reserved. 配給:東和ピクチャーズ

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