新型コロナワクチンの技術が「多発性硬化症」の治療にも役立つ可能性

1 週間前

2021年01月13日 23時00分サイエンス

BioNTechのウグル・シャヒンCEOは2020年1月7日に、同社が開発した新型コロナウイルスワクチン「BNT162b2」に使用されている技術を用いて、多発性硬化症の進行を食い止めることに成功したとの研究成果を、学術雑誌サイエンスで発表しました。

多発性硬化症とは、体の免疫が誤って脳や脊髄の神経組織を保護するミエリン鞘を攻撃してしまい、脳や体にさまざまな症状が現れる自己免疫疾患の一種です。通常、体内では免疫寛容という制御機能により免疫が暴走しないようになっていますが、免疫寛容が機能不全になり体組織を攻撃するようになると、多発性硬化症をはじめとする自己免疫疾患へと発展します。

多発性硬化症の治療には、免疫を抑制して神経組織の炎症を抑える方法が用いられていますが、これには感染症などの病気に対する免疫まで落ちてしまうという問題がありました。そこで役に立つのが、新型コロナウイルスワクチンとして初めて実用化されたmRNAワクチンの機能です。

新型コロナウイルスワクチンを開発する前は、mRNAワクチンを用いたがん治療の研究をしていたというシャヒン氏らは、mRNAワクチンが持つ「免疫を調整する働き」に着目。実際に、多発性硬化症の原因となる自己抗原の合成を促すmRNAワクチンを開発し、多発性硬化症のマウスに投与する実験を行いました。

その結果、mRNAワクチンを投与されたマウスは、後で非常に高濃度の自己抗原を投与されても炎症性の免疫反応を引き起こさないことが確かめられました。また、免疫抑制剤を用いた場合とは異なり、免疫が低下する傾向も見られなかったとのことです。

さらに、mRNAワクチンを投与されたマウスでは、免疫寛容をつかさどる制御性T細胞が活性化していることも分かりました。この制御性T細胞の働きにより、ミエリン鞘が免疫から攻撃されなくなったことが、mRNAワクチンが多発性硬化症の進行を食い止めた理由だと、研究チームは推測しています。

研究チームは論文の中で、「mRNAワクチンは、マウスで見られる全ての多発性硬化症の症状を抑制しました。また、尻尾のマヒといった多発性硬化症の初期症状が現れているマウスでも、症状の進行が抑制され、運動機能が回復しました」と報告しました。

BioNTechは発表の中で、「免疫応答に関する今回の研究結果と、個々の患者の自己抗原をターゲットにできるmRNA技術の柔軟性は、非常に複雑でまれな自己免疫疾患にも対応可能な『mRNA治療薬』が実現する可能性を示しています」と述べました。

2021年01月13日 23時00分00秒 in サイエンス, Posted by log1l_ks

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